2014年版 個人的にはこのマンガがすごいと思ったんだけどなぁ……

 たいへんお久しぶりです。このブログが完全にコレ専用になってしまっています。1年ぶりの更新ですが、この1年の間に仕事がありえないほど忙しくなったり失業したり再就職の目途が立ったりいろいろありましたが、漫画は例年ほど読んでません。なので、例年以上に偏った趣味からのランキングになることをご容赦願います。


過去記事

 始めたときにはまさかこれが5年も続くとは思いませんでした。
 以下、今年の私的漫画備忘録です。越すぞ年を。


 選考要件

  • 2013/12/26〜2014/12/25の間に単行本が発行された作品から選びます。
  • ノンジャンルでやります。結果として特定ジャンルばかりになったとしたら、それは単なるぼくの趣味趣向です。
  • 総合部門と、そのほかに一巻部門(期間内に1巻が出た作品対象)、完結部門(期間内に完結巻が出た作品を対象)、一冊部門(短編集および一冊の単行本でまとまってるもの)に分けて1位から5位まで順位をつけます。
  • 以上の条件のもとで、あとは基本的にぼくの好き嫌いを基準に、ぼくが読んだ作品の中から、1位から5位までを選出します。
  • 一応成人向け作品は除外。
  • 読書メーターは結局長続きしなかったです。



 今年もまずは一巻部門から。

一巻部門第5位「フラグタイム/さと/秋田書店

 一応もう2巻も出て完結していますが、それを僕がまだ読んでないので一巻部門に入れました。
 主人公に時間を止める能力があるというのはアダルトコンテンツ界隈では既に使い古されまくった設定だと思うんですが、それが百合ものになるとなかなか新鮮です。また、能力の使い方が面白くて、主人公の引っ込み思案で自信のない性格からくる説得力があるのでちゃんとこの設定を道具として乗りこなしているように思えます。

一巻部門第4位「夕空のクライフイズム/手原和憲/小学館

夕空のクライフイズム 1 (ビッグコミックス)

夕空のクライフイズム 1 (ビッグコミックス)

 サッカー漫画です。サッカーの戦術に関することとかマニアックなネタが作品の主題に近いところで扱われている(らしい)のですが、サッカーに特に深い関心の無い読者にもわかりやすくて面白いです。サッカーって素人目にはどうしてもセンスとフィジカルありきな競技に見えちゃうんですけど、そうじゃないんだなという。それと雨ちゃんの太腿がとても良いと思いました。

一巻部門第3位「あれよ星屑/山田参助/KADOKAWA」

 男の容姿をずいぶん艶っぽく描くなあと思っていたら、ゲイポルノ作品を主に手掛けていた人だそうで、なるほどと思いました。
 絶望とあっけらかんさ、生と死、猥雑さと孤独、そういったものが背中合わせの闇市の情景をあざやかに描いた一巻も、主人公二人の中国戦線でのエピソードを描く二巻以降もとても魅力的。

一巻部門第2位「応天の門/灰原薬/新潮社」

応天の門 1 (BUNCH COMICS)

応天の門 1 (BUNCH COMICS)

 若き菅原道真と好中年在原業平が京にはびこる怪事件をアレするアレです。当時の権力構造とか歴史的な状況とかはよく描けていて好ましいです。タイトルが示すように今後徐々に応天門の変へと物語が進んでいくのだろうと思います。
 ひきこもり天才少年道真の造形が今に伝わる人物像やその後の栄達を重ねた史実とどうも一致しないところが気になりますが、たぶんちゃんと考証していると思うので、今後道真少年の生き方やその後の伝えられ方が変わるようなきっかけがあったりするのかもしれません。

一巻部門第1位「娘の家出/志村貴子/集英社

 オムニバスストーリーかと思いきやまためんどくさい人たちの群像劇の幕が上がりそうで、僕は正直かなり期待しています。


 一巻部門6位以下(順不同)
働かないふたり 1 (BUNCH COMICS) 実家住み無職はつらい。
おしえて! ギャル子ちゃん 1 (MFコミックス) 鈴木健也先生が楽しそうで何よりです。
おかえりなさいサナギさん(1)(少年チャンピオン・コミックス・タップ! ) 若干画力が向上してる気がする。
女子小学生はじめました P! 1 (ジェッツコミックス) 本当にくだらなくて良い。
少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS) ほのぼの抒情派ディストピア




 続けて一冊部門。

一冊部門第5位「ビオトープ/ハトポポコ/KADOKAWA」

ビオトープ (電撃コミックスEX)

ビオトープ (電撃コミックスEX)

 ムーの小物感が最高でした。あと「あとがきは緊張してしまって言葉に詰まります」という作者あとがきが面白かったです。

一冊部門第4位「蟹に誘われて/panpanya/白泉社

蟹に誘われて

蟹に誘われて

 表題作「蟹に誘われて」がとても良かったです。あと椰子の実で発電する話が面白かった。迷子になる感覚とでも言うのか、作者は「知らない街」、あるいは「どこでもないどこか」というものを描く力にとても長けている人なんだと思います。

一冊部門第3位「空也上人がいた/新井英樹(原作:山田太一)/小学館

空也上人がいた (IKKI COMIX)

空也上人がいた (IKKI COMIX)

 新井英樹先生というのは「眼」で何かを表現するのがとても巧い漫画家で、それがこの原作にたぶんすごく合ってたのだろうなと思いました。
 それとこの作品も連載されていたIKKIの終刊というのは今年の一大トピックというか、サブカル漫画のひとつの時代が終わったような印象があります。

一冊部門第2位「夜毎の指先/真昼の果て/仙石寛子/白泉社

夜毎の指先/真昼の果て

夜毎の指先/真昼の果て

 「真昼の果て」も「夜毎の指先」もとても良かったです。巻末の短い描き下ろしの「どうせまた、朝が来るから」も善悪の彼岸にある底抜けの無邪気さみたいな感じがして好きでした。元々「禁断の恋」というのを大きなテーマとしている作家が、四コマ漫画誌という媒体の制約を離れてすごいことになっちゃったなあという印象。掲載誌『楽園』はなんというかすごく豪華な同人誌みたいで面白いですね。

一冊部門第1位「春風のスネグラチカ/沙村広明/太田出版

春風のスネグラチカ (F COMICS)

春風のスネグラチカ (F COMICS)

 IKKIの終刊とともにエロFの終刊もまた今年の大きなトピックだったと思います。紙雑誌媒体からウェブ連載に移行する流れというのはたぶん当面続くのでしょう。「マンガ雑誌」というパッケージごと消費する文化というのが無くなりつつある現状、そうした形式のほうが消費実態に見合っているのだと思います。
 それはさておき、近代ロシア史へのささやかな妄想から、ここまで精緻な物語を創りあげる筆力は本当にすごいの一言。お笑い路線でないほうの沙村広明作品の中では最高傑作になるかもしれない一作だと思います。


 一冊部門6位以下(順不同)
彼女のカーブ (F COMICS) 絵が良いと思います。言うほどカーブの話ではなく表紙詐欺感あり。
アナーキー・イン・ザ・JK (ヤングジャンプコミックス) サキュバスちゃんがかわいい。
白い狸 横山旬作品集 (ビームコミックス) カネコアツシ系統。『雑誌「ヨミ」』が熱い。
月刊すてきな終活 (バンブーコミックス) さすがにちょっと小坂先生の手に余るテーマだったのかなという印象。
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!) この悪趣味さに救われる人間というのもどこかにはいるのだろうか。
ポム・プリゾニエール La Pomme Prisonniere 鶴田謙二先生がお元気そうで何よりです。




 次は完結部門。

完結部門第5位「百合星人ナオコサン(全5巻)/kashmir/KADOKAWA」

 小児性愛を毒気なく表現するためには女性キャラを使えばいいという方法論を個人的に伸姉メソッドと呼んでいるのですが、それの極北にある漫画ですね。違うかもしれません。

完結部門第4位「魚の見る夢(全2巻)/小川麻衣子/芳文社

 これを姉妹物の百合漫画と言っていいのかわからないですが、そういう枠組みから出てきた作品です。
 「いい子」が「いい子」のまま「いい大人」になれるわけではなくて、どこかで「いい子」の殻を痛みとともに破る必要があって、これはそういう成長物語なんだろうと思いました。最後に姉妹二人が制服のまま旅に出るという終わり方はとても美しいと思います。

完結部門第3位「夏の前日(全5巻)/吉田基已/講談社

夏の前日(5)<完> (アフタヌーンKC)

夏の前日(5)<完> (アフタヌーンKC)

 なんというか、挙げといてあんまりコメントすることが無いんですけど、ぶつかり合うエゴとエゴっていうのは美しいもんだなと思います。

完結部門第2位「ラストイニング(全44巻)/中原裕神尾龍/小学館

 甲子園に行ってからは正直ほとんど蛇足で、2〜3回戦あたりで難波南洋と当たってしまえば良かったのにという気がしないでもないです。とはいえ、この作品は野球漫画の世界でひとつの金字塔を築いたと言っていいんじゃないかと思います。それと同時に、『ラストイニング』の完結を境に、野球漫画におけるリアリズムの潮流というのは一旦退いていくのかもしれません。

完結部門第1位「ねじまきカギュー(全16巻)/中山敦支/集英社

 最初から最後までずっとものすごいテンションと熱量のままで駆け抜けたとんでもない作品でした。カギューちゃんがブレずに猛スピードでか強くわいくなっていく物語でもあり、また「愛」についての物語でもありました。出はじめの頃はギャグ寄りのバトル漫画なんだとばっかり思っていたのですが、そういう予測を突き抜けてすごいところまで行ってしまいました。


 完結部門6位以下(順不同)
羊の木(5) (イブニングコミックス) 結局、前科者に限らず人間は誰が何をしでかすかわからないという話。
キヌ六(2) (アフタヌーンコミックス) スピード感とグルーヴ感と打ち切り感あふれるスチームパンク少女逃避行。
犯罪王ポポネポ 4 (ヤングジャンプコミックス) 倒錯の見本市。
新世紀エヴァンゲリオン (14) (カドカワコミックス・エース) 貞本ヱヴァは登場人物全員人間っていう感じが良かった。




 最後に総合部門。基準がないと逆に困るやつです。

総合部門第5位「この世界には有機人形がいる/蜈蚣Melibe/太田出版

この世界には有機人形がいる

この世界には有機人形がいる

 正直そんなに「オススメ」できるタイプの作品ではないのでランキングに入れるかどうか最後まで迷いましたが、この作品が2014年に刊行されたという事実はどこかに記念されておくべきだと思います。

総合部門第4位「灰色の春/小坂俊史/ジャポニカ自由帳」

灰色の春
 アマゾンや楽天には無かったのでCOMICZINの通販サイトへのリンクを貼っています。コミティアで頒布されていた小坂俊史先生の同人作品で、小坂先生ご自身の遠野市での被災体験が『遠野モノがたり』のなのかに仮託されて淡々と綴られています。
 東日本大震災やその後の原発災害を取り扱った作品はちょくちょく出てますし、多分今後もしばらくはちょくちょく出るんだろうなと思いますが、等身大の記録というか、事実の大きさに圧倒される一人の当事者/非当事者の小ささということがもっと描かれていいのかなと思ったりします。

総合部門第3位「それでも町は回っている/石黒正数/少年画報社

 第104話「暗黒卓球少女」が素晴らしかったです。

総合部門第2位「子供はわかってあげない/田島列島/講談社

 素晴らしい装丁と相次いで繰り出される小ネタと最高の夏。アタックチャンスとかジョニーとかはあれはサクタさんの超能力なんでしょうか。あるいはもじくんが砂浜に文字を書いたら云々というのも彼の超能力なのかもしれず、もしかしからこの作品は「人は誰しも何かしら超能力を秘めている」という話だったりするのかもしれないと今思いました。

総合部門第1位「シャーリー/森薫/KADOKAWA」

 11年ぶり新刊。11年前というと僕はまだ物心もついてない中学生でした。隔世の感があります。
 ハイヒールの話が微笑ましくて良かったです。空気感はさほど変わらず、絵はさらに凄くなった印象。世界観に見惚れるというタイプの良さがあります。




 以上です。お付き合いいただきありがとうございました。良いお年を。